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自転車のデザインならおまかせ "アトリエ・キノピオ"探訪レポート

ご縁が続いたことをきっかけに長野県箕輪町にあるアトリエ・キノピオさんの工房を訪ねてきました。

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多くのサイクリストの例に漏れず、長野県は大好きな土地で年に何度も訪れています。

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 東西をアルプスに囲まれたのどかな平野に現れるイタリアントリコロールの旗と看板。それがアトリエの目印です。

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秘密基地のような建物へ足を踏み入れると工房の主人が迎えてくれました。

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こちらが自転車職人でアトリエのデザイナー兼チーフペインターである安田マサテル氏です。たくさんの肩書きがありますが、実際に大学で金属工芸とデザインを学ばれイタリアの有名工房でフレーム製作からペイントの全てをこなした実績、日本へ戻られてからの目を見張る仕事ぶりを見ればそれもすべて納得。

元は凄腕のペインターとお聞きして仕事をお願いしたのですが、安田氏は"そうではない"と話します。

「僕は塗装屋としては2流ですよ。シンプルな単色のフレームペイントなら大阪の老舗の塗装屋さんにお願いしてもらった方が絶対に安いし上手です。ぜひそっちへ持っていってください。笑」

「じゃあ僕は何をするかっていうと"デザイン"なんです。既製品にはない新しいデザインを創り出したりお客さんがなんとなく持ってるイメージを形にしたい、そういうご要望があるならぜひ僕に任せてください。うちの仕事のメインは塗装ではなくデザイン、だからアトリエって名付けてるんですよ?」

これに私は衝撃を受けました。というのも今まで塗装をお願いする時、デザインは当然自分たちで用意すべきものでしたし、色についても実在するものや品番で絶対に間違いの起こらないように細かく指定するのが当たり前でした。もちろん、これは感覚的な部分を多く残すことによって仕上がりのイメージに齟齬が生じないようにする当然のルールだとは思います。塗装屋の仕事は依頼されたとおりに塗装を施工することだからです。

安田氏は続けます。
「例えばうちが料亭だとして大衆チェーン店のレシピを持ち込んで同じものを作ってくれと言われてももちろん作ることは出来ますよ。しかし大衆店より価格は高くなってしまいますので、それならその大衆店に行った方が早いし安い。うちでオーダーしてくださるなら例えば予算と食べたい食材の希望を聞かせて欲しいんです。そこから何を使ってどう調理するかが僕たちの腕の見せ所です。カウンセリングしながら、お客さんの好きなものや今の気分に合うものを探りつつ、旬の食材を織り交ぜて自分たちの出せる最高のメニューを考えていきます。デザインにしても大まかなイメージや好きなもの、実現したい要素等を話してもらってあとは出来るだけ余白を残しておいてもらえる方が仕事がやりやすいんです。」

これは非常にありがたいぞ…。フレームオーダーの際やなんとなくリペイントをしてみたいと思いながらもデザインを考えるハードルが高く感じてシンプルなものや既製品の模倣で妥協したり、諦めたりしている人がどれだけいることか。

そして私たちにとってもう1つ大事なところは価格です。ご自身の話でも事前に聞いてた話でも"高い"と言われるキノピオのペイント料金ですが具体的な額を聞いてまた衝撃。

え、普通……というか安くないですか??

オーソドックスなものならデザイン料込みで60,000円〜、ショーバイクレベルのかなり凝った塗装でも100.000円くらいとおっしゃるじゃあないですか。(内容によりもちろん変動はありますが)他の塗装屋さんと比較しても大差ありません。

「元々、企業でデザインやってたから予算にはシビアなんです。自転車でどれだけ凝ったペイントって言ってもお客さんが納得いく金額はそれくらいまでかなと。かっこいいけど値段もとんでもない、じゃあ満足してもらえないでしょう。」

聞いてたよりだいぶ安い。というかあれだけ複雑なデザイン案をいくつも提示して(色んな没案を見せてもらって驚愕)、それがペイント代金に含まれてますで済ませてしまう安田氏。(昨今の物価高騰の事情からデザイン費は別途請求に変更になりました)

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超多忙でありながらも私のために時間を割いてくれ、ゆっくりお話することが出来ました。

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塗装業を始めたきっかけについて

「元々、設備がない頃はうちでデザインだけして施工は塗装屋さんにお願いしてたんですよ。でも自分の描いたものと細かい部分で微妙に違いが出たものが仕上がって来てしまうんです。やはり自分の頭の中にあるものは自分で再現するしかないと思いましたね。」

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そういうとたくさんのデザイン画が貼られた設備の中からいくつかフレームを見せてくれました。

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デザイン画そのままの姿に塗られたフレームがたくさん

「どうです?ほとんどデザイン画と同じ仕上がりになってるでしょう」
と自信が溢れ出ています。

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ヌリ部のスペースも見てみますか、と奥へ案内してくれる安田氏

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なんてワクワクするスペースなんでしょう

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仕上げのペイントを実演してくださる安田氏。シンプルに見える自転車の塗装は実は何層にもなっていてそれぞれ見せ方を変えるために工夫をしているそう。

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その後"ちょっとデザインのシミュレーションもしてみますか"と2階へ案内してくれました。

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過去のアーカイブや温めているデザインに加え、イタリア時代の貴重な経験談をたくさん聞かせて頂きました。掲載されている経歴以外にもディスプレイ屋としてUSJのクリマスイベントやディズニーのシーズンイベントを指揮した(!)こともあるんだとか。素敵すぎる。

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これらのペイントはその時に見せていただいたデザインのほんの一部です。

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とあるアニメの作者ご本人がラン○ロットをモチーフにしたペイントを依頼されたこともあるそう。

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他にも100パターンくらいは見せて頂いてますが載せきれません
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じつは今、店頭で展示するために用意したOPEN CYCLEのペイントをお願いしています。最初はある程度デザインを用意していたんですが、お話を伺っているうちにほぼ"おまかせ"オーダーに変更させてもらいました。一体どんなデザインが出来上がってくるのか、今からとても楽しみです。

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アトリエを去る頃には4時間以上が経過していました。キノピオは他に類を見ない独創的で魅力的な空間でした。仕事ぶりはもちろん、安田氏のお人柄にもすっかり惚れ込んでしまった私です。

カスタムペイントに興味をお持ちでデザインに困っている方、予算が障害になって迷っていた方はぜひお気軽にご相談ください。アトリエ・キノピオを通じてイメージや"好き"を形にしていきましょう。オーバーホールやカスタムの際であれば、追加工賃が発生せずスムーズです。

コンポーネントやホイールに20万円かけてアップグレードももちろん良いですが、予算15万円で愛車を新車のようにリフレッシュして、世界に1つだけのオリジナリティ溢れるフレームを手に入れるというのもかなり魅力的ではないでしょうか。ぜひご検討ください。

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