久々のグループ遠征へ
久しぶりに信州方面へ遠征に行ってきました。K&M CYCLEとして営業していたころは毎年お客様と一緒に乗鞍や美ヶ原、渋峠といった信州方面の山々に出かけていましたが、backyardの開店準備を始めた頃からなかなか時間がとれなくなり随分あいだが開いてしまいました。特に乗鞍スカイラインへは通行止めになっていた期間もあり3-4年ぶりになった気がします。
当初はそこそこの大所帯だったグループは事前の天気予報がいまひとつだったため、数名のあきらめの悪いメンバーのみで決行することに。果たして直前で予報は好転し、どうやら極寒ではあるものの天気は晴れそうではあるということで、僕たち一行はアルプスの山々と抜けるようなあの青い空に思いをはせて車を東へと走らせるのでした。
はじまりは雨
高山の町で前泊をし、もう何度見たか分からない天気予報をダメ押しとばかり朝一番にも確認したところ、変わらずの晴れ予報。「これは勝った!」と心の中ですでに勝利宣言をしたのもつかの間…
なんと朴木平のバスのりばに着くころにはしっかりと雨が降り始めていました。「そんなバカな、、、」。予報を信じきり胸を躍らせていた僕たちの心にも一気に分厚い雲が広がります。雨はなお止む気配がなく、その勢いは車から降りることもためらわれるほどです。再度、天気予報を確認してみるも現在進行形で晴れ予報は変わっておらず、雨雲レーダーを確認しても雨雲のかげはなし。「じゃあ一体何なんだよ、これは」。途方に暮れつつも少しでも判断材料になる情報を集めるためスマートフォンを見ていたところ乗鞍大雪渓WebSiteのXアカウントにこんな投稿が見つかります。
「晴れ」「視界良好」、、、目の前に広がる光景から想像もできない言葉ですが、ここは天気の変わりやすい険しい山岳地帯。きっと高いところまで行ければ晴れ間がのぞく瞬間もあるはず、とメンバー内で相談した結果「走ってみよう」と意見が一致しました。外は気温7℃に加えて、冷たい雨が降っています。おのおのウィンドブレーカーやレインジャケットを羽織って、当初の期待値をはるかに下回る、先の見えないライドが始まりました。
雨は相変わらず降っているものの走れないほどではないため、慎重にペダルを回しながら上を目指します。
しばらくして雨足が弱まり気温が上がってくると今度は辺り全体が濃霧に包まれました。朝の8時頃であるにも関わらずゲートの警備員は点灯した懐中電灯を手に持っています。10m先もはっきり見渡せない状況の中、前方に目を凝らし濡れた足元に注意を払いながらゲートをくぐりました。
近年何度かの大きな崩落を起こしてスカイラインの通行止めの原因を作っているエリアでは大規模な工事が行われていました。どうやら問題の区間をパスするためのトンネルを掘っている様子。完成はまだ先のようですが、近い将来乗鞍で見られる光景がまた変わりそうです。
深い霧の中「こんな景色も幻想的で悪くないかもしれないな」と気持ちは段々と今を楽しむ方へシフトしていました。淡々とペダルを回し、一行はいよいよ2,000mを越える標高へ差し掛かります。
華麗なる逆転そして雲の海へ
濃霧や霧雨にも慣れ、無心に走っていた一行に突然その瞬間は訪れました。「光だ、、、!」
突然、木々の間から目が眩むほどの陽光が差し込み、頭上が明るくなっていきます。
雲と青空の境界がはっきり見えます。ここまで来てようやく自分たちは雨雲ではなく斜面に発生した山霧の中にいたんだということに確信が持てました。それならレーダーに映っていないのも納得です。つまり、ここからは晴天で遠方まで見渡せるいつもの景色が待っているはず、、、
しかし、やはりここは飛騨山脈の最高峰である乗鞍岳。ちっぽけな僕のそんな見立ては軽々と飛び越され、予想もしないスケールの景色が僕たちを迎えてくれました。
それは見渡す限りの雲の海です。北アルプスの山々をすべて飲み込むほどの分厚い雲海。これほどの規模のものを見たのは僕自身初めてです。
真っ青な空と見渡す限りの白い雲。間違いなく過去最高の乗鞍の景色がそこにはありました。何もかもスケールが大きすぎて何度も訪れている場所のはずなのに圧倒されてしまい前へ進むことが出来ません。
一面まっ白な世界は目にまぶしく、まるで広大な雪原を走っているかのような錯覚を起こします。
予定より大幅に時間をかけて2,700m地点の畳平にようやく到着。すでに冬への備えとして銀嶺荘は閉鎖され、記念撮影用の看板やプレートはすべて片付けられています。自転車で乗鞍へあがれるのは10月末までなのでなんとか滑り込みで2024年に間に合わせることができました。
岐阜-長野の県境付近は多くのサイクリストでにぎわっていました。紅葉がピークの時期ということもあり、圧倒的にエコーライン側から登ってきた方の方が多かったようです。この素晴らしい景色をみんなで共有できたことに感謝
僕たちが登ってきたスカイラインだけでなくエコーライン側もすっぽり雲の海に沈んでいます。これがどれくらいのぶ厚い雲なのかは、上の写真の右下にかすかに見える赤い屋根の位ヶ原山荘(標高2,350m)をもう少しで飲み込もうとしているのを見て頂けると想像しやすいのではないでしょうか。
十分に景色を堪能してから、またスカイラインを降っていきました。結局この日は2時過ぎに降りきるまで雲海はまったく無くならず1日中しっかりと存在していました。狙っていなかったので後で振り返ったことですが、この日は「前日の雨」「夜との気温差」「風のない日」という雲海の出やすい条件を完全に満たしていました。特に気温については予報で畳平付近が日中でも氷点下となっていたところ、実際は13℃くらいまで上がっていて冬支度で備えていた僕たちには暑いくらいでした。
そしてまた深い雲の中へと潜り、駐車場まで戻っていくのでした。雲の中の気温は5℃と相当低く2,700m地点で13℃あった暖かさは1,700m地点に向けて標高を降るにつれ徐々に気温が下がっていくという不思議な体験をしました。
さいごに
乗鞍は何度行っても良いもんだ!来年はみなさんもぜひご一緒しましょう
タテグ